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書評シリーズ第8回 『思考停止という病』

「気づけば陥っている日本全土の蔓延病」

第8回目は、苫米地 英人氏著の「思考停止という病」です。

この本は、昨今の日本人が陥りがちな思考停止をすることへの警鐘と、その対処法について述べています。

全体の概要としては、おおまかに以下のような流れとなっています。

・思考停止する人たちの定義

・そもそも思考するとは

・思考停止する原因

・自分で思考することの重要性

・具体的に思考する方法

まず作者は冒頭で、日本社会における自分の頭で考えない、いわゆる思考停止した人の存在を指摘しています。こうした人達が自分で考えることができないのは、単に彼らが「バカである」と、バッサリと切り捨てるところから始まります。

つづいて「思考する」ことの定義について、次の2つのレベルでみることができると述べています。

①物理的な脳の活動

②創造的な問題解決活動

①については、人は寝ている状態でも脳の活動はなされているため、物理的に思考は停止していないと言えます。しかし、本書で言及しているのは、②のクリエイティブな思考についてです。

思考について、筆者は以下のように分類できると述べ、

・分類する(考察する)

・意思決定する

・問題を解決する(最適解をみつける)

・仮説をつくる

日本人のほとんどがこれらを放棄して生きていると主張しています。

では、思考停止に陥る原因とは一体どのようなものがあるのでしょうか?

・前例主義

・知識不足

・ゴールがない

筆者は主に上記3つが原因であると述べています。

まず一つ目の「前例主義」とは、「何かを行う時、過去のやり方・結果を引き継ぐ考え方」であり、日本の経営でも長らく採用されている考え方です。

例えば、経営者や管理職の意思決定が前年の売上金額をもとに来年の売上目標を立てることや、今までの仕事の進め方を踏襲するなどです。

現在でも日本の多くの企業で見られる慣習であり、斜陽産業においても以前のやり方を変えようとしないといった点などが、思考停止の代表例であると述べています。

そして、この前例主義の根底にあるのが、学校教育の「前へならえ」であると主張しています。

そもそも、われわれは幼少期の頃から学校教育等を通じて思考停止し、自分の意思でものごとを考えられなくなるように洗脳されていると述べています。

特に日本においては、小学校から高校まで知識の習得のみを目的とし、自分の頭で考える訓練をしません。一方アメリカでは、ディスカッション形式の授業を多く行い、「自分の頭で考えること」を重要視しています。

知識の習得ももちろん大切ですが、それだけで終わっていてはダメで、「そこから自分の頭で考えることができる人だけが本当の意味で勉強していたといえる」と著者は主張しています。

2つ目の原因としては、「知識不足」を挙げています。

人間の脳というのは、「知っているものしか認識できない」という前提があり、知らないことや自分にとって重要度が低いものは認識しないというのです。

たしかに、私も一時バイクに乗りたいと考えた時、やたらバイクに関する情報が目につくようになりました。こういった、興味を持った物の情報がよく目につくようになった経験は、誰しもがあると思います。

心理的な盲点のことを「スコトーマ」と言い、知識がない人はスコトーマの世界で生きていると述べています。つまり、知識がないから見えていないことだらけであり、スコトーマを払拭する方法は知識を得ることである、というのです。

そして3つ目は、「ゴールがないこと」です。

知識と並んで重要なのが「ゴール」であり、「本気で達成したいと思えるゴールがあるからこそ、思考を動かすパワーが生まれる」と著者は述べています。

ゴールを設定することで、それを達成するまで思考が働き続けるのであり、思考停止する人は、ゴールがないから思考停止していると主張しています。

しかし、ゴールを達成したらまた思考停止してしまうため、著者は、ゴールを達成しそうになったら、次のゴールを早めにみつけておく必要があると説いています。

また、ビジネスマンにはゴールがないと述べており、「自分の努めている会社の社長になる」などは、ゴールではないと言っています。

ゴール設定は「現状の外側」に置くことが前提で、今現在の延長上ではなく、「現状を変えなければ達成できないもの」でなければいけないと述べています。

続いて、自分で思考をすることの重要性についてみていきたいと思います。

日本において、バブル経済崩壊以降、かの有名な大企業でさえリストラを敢行するなど、昔みたいな年功序列制度が崩壊しつつあります。

先が見通せない時代において、既存のやり方にしがみつくのは通じなくなってきており、自分で考える力がますます重要になってきています。

成功している人は、常に先を予測し、次々と生まれる問題に先回りしながら手を打っており、それらを自分で考えているというのです。

また、自分で考えることで、詐欺やカルト宗教などに騙されないような脳を作ることができるとも述べています。

今後も考える人と思考停止している人との差はますます開いていくと思われます。

では、自分で考える力をつける、具体的な方法についてみていきます。

一つは先ほど思考停止の原因の箇所でも述べた、「ゴールを設定すること」です。

繰り返しですが、簡単に達成できるものではなく、達成できるか分からない「現状の外側」にゴールを設定することが重要です。

外側に設定することで現状を変えることができるというのです。

2つ目は、「圧倒的な知識量の習得」です。つまり、勉強するということです。

勉強と言っても、学校の授業のような、テストで点数を取ることが目的のものではなく、自分の興味を持った分野について徹底的に知識を獲得するというものです。

知識を獲得する方法としては、やはり「読書」が優れており、ただ本を読むのではなく、「著者になりきって読む」、「意図、問い、関連性を持って読む」、「同一分野を同時に読む(並列読書)」といったやり方を紹介しています。

ここで個人的に特に印象に残った点として、「本をランダムに選べ」と著者が主張したことが挙げられます。

自分の好みで本を選ぶと知識に偏りが生じてしまうため、圧倒的な知識を手に入れるための読書においては、ランダムに広範囲なジャンルを選ぶことが重要と説いています。

そして、知識を得る際に重要なのは、「一気に、なるべく早く」とのことで、一気に知識をつけるためにまずやるべきは、「全体を把握すること」と述べています。

他にも「ロジカルシンキング」や「トゥルーミンライティングワーク」といった、事実ベースで文章を書くトレーニングについても言及しています。

そして、情報発信すること。

これらは、以前記事にした樺沢 紫苑氏著の「アウトプット大全」でも取り上げた内容でも取り上げており、まさに思考するためには「アウトプット」が重要であるということを、改めて思い知らされることになりました。

最後に、著者はゴール設定において、ゴールは一つではなく複数持つことをすすめており、「お金と仕事を分けること」を、重要な点として説いています。

お金を稼ぐことと自分の職業は別でよく、お金をゴールにした瞬間に、それに囚われ自由ではなくなると言っています。

お金をゴール設定すると、資本主義社会に飲まれ、他人との競争に巻き込まれることになり、自分の本当にやりたいことが見えなくなると言うのです。

私自身、自分のやりたいことで食べていけるようになることをひとつの目標としていますが、この一節を読んで目からウロコの思いでした。

お金をゴールにするということは、結局他人の頭で考えさせられていることになるのである、と。

大切なのは、自分自身の判断で人生の価値を決めることなのです。

私も自分自身の頭で考え、本当にやりたいことをゴールに設定し、それを達成するために日々思考をしていきたいと思います。

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