書評シリーズ第1回 『GIVE AND TAKE』
著者:アダム・グラント
これから読んだ本の書評をしていきます。自分が特に勉強になった点や印象に残った点を中心に書いていきますので、少しでも皆さんの参考になれば幸いです。
第1回目はアダム・グラント著の「GIVE AND TAKE」です。
「利用されるだけの良い人、成功する良い人、その違いとは?」
この本では、人間は3つのタイプであるギバー、マッチャー、テイカーに分類され、そのいずれかに当てはまると述べています。
①相手により多くを与えようとするギバー
②人に恩を施されたら、お礼を返して帳尻を合わせようとするマッチャー
③相手に与えるより、多くを得ようとするテイカー
この本の面白い点は、ギバーはお人好しが多く、テイカーに利用され易いため、成功するのが難しいが、一番大成功するのもギバーであると述べている点です。会社においても、上司に媚を売る者の方が、真面目に仕事をしている者より出世するというのはよくある話だと思います。
利用されるギバーと成功を収めるギバーの違いは、「自己犠牲型」か「他者志向型」かの差であると言います。自己犠牲を続けると、いずれボロボロになり燃え尽きてしまいます。しかし、他者志向型のギバーは他人に与えることに関心を抱きながらも、自分の利益も大切にします。
本当に成功したいのなら、相手に多くを与えてコミュニティ内の総利得を増やし、信頼を積み重ねることが重要です。しかし、中にはそういった他者のために行動する者を利用しようとする者、いわゆるテイカーも存在します。では、どのようにしてテイカーに良いように利用されずにギブを増やし成功できるのでしょうか?
それは、テイカーに対してだけマッチャーになること。テイカーは人から得ることで自分の地位を確保しようとするが、マッチャーがそれを阻むと言うのです。しかし、テイカーに対して毎回阻んでばかりでもいけなく、彼らと上手く付き合うには、3回に1回は多めに見る「寛大なしっぺ返し」が効果的であると述べています。
また、テイカーの見分け方としていくつか挙げており、一例として、相手に「自身が良い影響を与えた人物は誰ですか?」と、質問をすることだと言います。ギバーが自身より立場が低い者と答えるのに対し、テイカーは会社の上司など、目上の方と答える傾向があるそうです。
さらには、コミュ二ティ内で全員がギバーになればテイカーがいなくなると述べています。
アメリカのデロン・ビールという男性が「フリーサイクル」と呼ばれる、売買・交換不可を原則とした登録した人同士が無償で品物を与え合うサイトを立ち上げました。初めは品物が欲しい人と不用品を処分したい人を結びつけることを目的としており、ギブアンドテイクの考え方を持ち出す人や、ガラクタ同然の物を提供する人がいてなかなか上手くいかなったそうです。ところが、お金を取っても売れるだろうレベルの物を人々が提供し始めると、サイトは活気づき、次第にまだまだ使える品物を多くの人が出品し始めました。この時期から、当初30人程度だった会員は1年経たないうちに10万人を超え、その後100万人以上に増えたそうです。
人間は誰しも、多かれ少なかれ人の役に立ちたいという気持ちがあるそうで、ギバー、マッチャー、テイカーにしろ、いずれか一つのタイプで人生の全ての領域に対処する人はまずいないとのことです。グループ内で与えることが当たり前になると、たとえ他の場所でマッチャーやテイカーとして振る舞っていたとしても、そのグループ内の人には与えるようになるそうです。このように誰もが与えることができれば、全体のパイが大きくなり、ギバーは受け取る以上に与えなくてもよくなるとのことです。
以上、主にテイカーの見分け方と付き合い方を軸に記述してきましたが、本にはもっと具体的にギバーとしての振る舞い方やその効果、マッチャーではなぜ大きく成功できないのか、人々がお互いを助ける理由などについて述べております。興味を持ってくださった方は是非本書を一読していただきましたら幸いです。
今まで、結局世の中は良い人が損をするのだろうか?と疑問に思っていましたが、本書を読んで、その疑問が晴れた気がします。人に親切にして感謝されるというのはやはり気持ちの良いものです。
与え合うのが当たり前になる世の中になって欲しいと思いますが、現実はそれが難しいというのも分かります。であれば、せめて自分の身近から少しずつギブが増えていくように努めていきたいと思いました。
以上となります。ここまで読んでいただきまして、ありがとうございました!