人生を変えた名盤シリーズVol.21『AKIRA:Symphonic Suite』
「欲しけりゃな、お前もデカいのブン取りな!」
第21回目は「芸能山城組」より、アニメ映画「AKIRA」のサウンドトラックである『AKIRA:Symphonic Suite』です。
「AKIRA」は私が中学生の頃に初めて観た漫画作品で、そのサイバーパンクな近未来の世界観に衝撃を受けました。
緻密な作画と「AKIRA」の謎を巡る壮大なストーリーは当時の私を夢中にさせました。
映画「AKIRA」は、作者である「大友克洋」氏が直々に監督をし、1988年7月16日に公開されました。
制作費は当時では破格の10億円が投じられましたが、公開当初は思うように伸びず、制作費を回収するまでには至りませんでした。
しかしその後、海外で公開されると徐々に話題を呼ぶようになり、今ではジャパニメーションの金字塔と呼ばれるほどの作品になりました。
大友克洋氏は映画に使用する音楽を選ぶに当たり、当時SF作品にはシンセサイザーを使用するのが定番でしたが、それではありきたりであり、何か新しいことをしたいと考え、当時好んで聴いていた「芸能山城組」を使用することに決めました。
当初山城組は乗り気ではありませんでしたが、大友が絵コンテを見せたところ、作品に興味を持ち全面的に音楽を担当することとなりました。
それでは楽曲紹介に移りたいと思います。
曲目は以下の通り全10曲です。
<SIDE A>
1.『Kaneda』
2.『Battle Against Clown』
3.『Tetsuo』
<SIDE B>
1.『Shohmyoh』
2.『Dolls’ Polyphony』
3.『Exodus From The Underground Fortress』
<SIDE C>
1.『Winds Over Neo-Tokyo』
2.『Illusion』
<SIDE D>
1.『Mutation』
2.『Requiem』
1曲目の『Kaneda』は、映画冒頭の首都高でのバイクチェイスシーンで流れます。
民族音楽を彷彿とさせる打楽器をバックにした曲調は、ネオン彩る都心の背景に意外なほどマッチしています。
ちなみにこの冒頭20分ほどのバイクシーンは私自身30回以上は繰り返し観ており、バイクが走り出したあとのテールランプの残像など、後のアニメに多大な影響を与えたシーンです。
その後2曲目の『Battle Against Clown』が、敵対する暴走チーム「クラウン」のリーダーが登場するシーンで流れます。
金田とクラウンのリーダーのお互いのプライドを掛けたチキンレースはアニメ史屈指の名シーンだと思います。
続いて3曲目の『Tetsuo』は、バイクで走行中に、不思議な力を持つ「タカシ」と接触することで超能力に目覚めた「鉄雄」をモチーフにした、精神の深層世界を表したような独特な曲調の作品です。
鉄雄が登場するときにたびたび流れる、パイプオルガンと思われる伴奏がラスボス感があって印象的です。
他にB面3曲目の『Exodus From The Underground Fortress』は、個人的に本作で最も気に入っている作品です。
劇中では金田とレジスタンスの一員である少女ケイが、敵の追ってから下水道に逃げ込むシーンで流れます。
疾走感のある曲調と、激しいディストーションの効いたギターが緊張感を煽ります。
しかし激しいだけではなく、静と動の対比がなされている構成で聴き手を飽きさせません。
そしてラストのD面2曲目の『Requiem』は、映画導入シーンで使用された和太鼓の音が印象的で、ラストに相応しい荘厳さを秘めており、その後は一曲めの『Kaneda』へとリフレインしていきます。
本作を通して芸能山城組の特筆すべき点と感じたのは、その音楽性の多様さです。
伝統的な民謡のようなものから、激しいロック、電子音楽など、国や時代を超越し、あらゆる音色を奏でます。
映画「AKIRA」では、その革新的な映像にばかり目が行きがちですが、その画面を彩る音響も、この作品を独創的なものに仕上げることに寄与したことは否定できないと思います。
また、作中で2020年のTOKYOオリンピックを予言するなど、近年その未来予想図が話題になったりしていました。
昨今のアニメに引けを取らないクオリティのため、ぜひ映画もおすすめです。
(ちなみによく誤解されがちですが、ジャケットの人物は物語の主人公「金田」であり、「AKIRA」ではありません。)