書評シリーズ第4回 『20歳に受けさせたい文章講義』
著者:古賀 史健
「文体はリズムである。」
「嫌われる勇気」で有名な、古賀 史健氏の文章の書き方に関する本です。
ライターを本職としている古賀 史健氏。本書では、その経験から培ってきたライティングのノウハウを余すことなく披露しています。
本書を読むことで、言葉では話せるけど文章が書けない原因や、読みやすい文章にするための具体的な方法を学ぶことができます。
この本は大まかに、以下のような構成となっています。
- ガイダンス「文章とは何か?」
- 第1講「読みやすい文章とは?」
- 第2講「文章の構成」
- 第3講「読者を引きつけるには?」
- 第4講「編集について」
まず心構えとして、「書くこととは考えることである」と作者は主張しています。
例えば、何か問題に直面した際に、書くことによって頭の中の考えを洗い出し、整理することによって解決策が見えたりします。
このように「人は考えてから書くのではなく、考えるために書くのである。」とのことです。
また、文章が書けない原因として、”書こうとしているから書けない”と述べており、”頭の中の考えを翻訳する”意識が大事と述べています。
言葉で話せば伝わるのに、文章で伝えようとすると上手く伝えられなかった経験は誰しもあると思います。それに関して著者は、自分の考えを翻訳する力が足りていない旨を述べています。
翻訳する方法として、「人から聞いた話を誰かに話すこと」が一つに挙げられています。人に話すことで内容が整理され、新たな発見が生まれるとのことです。
他にも著者は、日本語学者 金田一 秀穂氏が考案した「絵や写真を言葉で説明するゲーム」を提示しています。”自分の意見を一切入れないこと”を基本ルールとし、グラスなどの物を言葉だけで説明・描写していくことで、翻訳する力が上がるのだそうです。
これは面白そうだと思ったため、ぜひ実践していきたいですね。
「文章とは考えること」というのは分かりました。
しかし、実際に文章を書いてみると、どこか理路整然としません。
では、理路整然とした分かりやすい文章にするにはどうしたら良いのでしょうか?
「文体とはリズムである」
著者は、読みにくい文章とはリズムが悪い文章であると言っています。
リズムが悪くなる原因として、以下のような誤った接続詞を用いた論理展開が第一に挙げられます。
「本日は午後に雨が降るそうだ。しかし、洗濯はしない方がいい。」
ここでは、「しかし」という接続詞が、違和感を感じる原因となっています。
次のようにするとしっくりくるのでは無いでしょうか。
「本日は午後に雨が降るそうだ。よって、洗濯はしない方がいい。」
これは一例ですが、文章を書く際に違和感を感じた場合、まず適切な接続詞が使われているか疑った方がよさそうです。
また、著者は読みやすい文章に他に必要なものとして、「視覚的リズム」を挙げています。
具体的には①句読点の打ち方、②改行のタイミング、③漢字とひらがなのバランスの三つを挙げています。
①の句読点に関しては、一行の文には必ず一つは入れた方がいいとしており、句読点が無い文章は、ダラダラとメリハリがないものになってしまいます。
②の改行に関しては、文章が10行以上続くと圧迫感が出てくるため、5行くらいをめどに、早めに改行を入れた方がいいとのことです。
③の漢字とひらがなのバランスについて、難しい漢字はリズムを悪くし、漢字ばかりの文章は圧迫感が出てきてしまいます。よって、漢字とひらがなの読みやすく丁度いいバランスが大事だとのことです。
そして、書き上げた文章のリズムに淀みが無いかを、最後に”音読”することで確認します。声に出すことで文章の違和感に気づくと言うのです。
続いて文章の構成について、著者は「映画」を参考にしているとの独自の見解を述べています。
映画は大まかに①導入、②本編、③結末で構成されており、これを文章にも当てはめていくのだと言っています。
まずは読者に読んでもらうために①の導入で興味を引き、②で自論を展開し、③で客観的な事実などを用いて、より自論を強固にするというのです。
普段映画の構成を意識して観ていなかったため、これは新たな視点を学ぶことができました。
元々映画監督を志望していた、著者ならではの視点ですね。
ちなみに、この章で個人的に印象に残った点として、「大まかな嘘はいいが、細かい嘘は許されない」と著者が主張していることです。
例えば「宇宙人が地球を攻めてくる」など、現実には無い舞台設定は観客が許してくれますが、宇宙人と闘う戦闘員の服装や武器などが安っぽかったり、嘘が混ざっていると途端に観客は興醒めすると言うのです。
細部を丁寧に描写することでリアリティが増し、より観客を作品に引き込むことができるのですね。
また、著者は文章を書く際、読者を意識することが大事であり、10年前の自分に言い聞かせるような意識をしながら書くことを勧めています。
自分で書いた文章であれば、多少論理が詰まっていても読めてしまいますが、読者からしたら読みにくい文章であるかもしれません。
10年前の自分がこの情報を知っていたら、もっと悩んだりせずに済んだろうと思って書き上げた文章は、「伝えたい」と言う思いがあるため、言葉の強度が増し、より伝わりやすくなるのだと述べています。
この点は、今後文章を書く際に常に意識していきたいですね。
他にも著者は編集について、文章を足し算ではなく、”引き算”で考えることの重要性なども解説しています。
ご興味を持たれた方は、ぜひ本書を手に取っていただけたら幸いです。
私自身、当サイトにて書評を載せていますが、正直なところ文章力はまだまだだと思っています。
しかし、本書を読んだことで、文章を書くということの根底にある部分を理解することができました。
より良い文章を書くために、これからも本書で学んだことを意識しながら精進して参りたいと思います!
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。