王道だけどちゃんと聴いてなかったシリーズvol.5 『ヒステリア(Hysteria)』
「スタジアムロックの最高峰」
第5回目は、「デフ・レパード(Def Leppard)」より、4作目の『ヒステリア(Hysteria)』です。
デフ・レパードは、1977年イングランドで結成し、1980年『オン・スルー・ザ・ナイト(On Through the Night)』でデビューした、いわゆる80年代初頭のNWOBHM(ニュー・ウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィメタル)のバンドの一つです。
3作目の『炎のターゲット(Pyromania)』が、全米チャートで「マイケル・ジャクソン」の『スリラー』に次ぐ2位を獲得する大ヒットとなります。
前作のヒットを受けて次作への期待がかかる中、バンドは4枚目のアルバム制作にとりかかりますが、1984年にドラムのリック・アレンが交通事故で左腕を切断する不幸に見舞われます。
一時期バンドは解散に追い込まれますが、事故報道を知ったシモンズ社が、右腕と両足だけで演奏可能なドラムセットをアレンに提供しました。
その後アレンは猛練習を経てバンドへ復帰し、1987年今作『ヒステリア』が完成します。
メンバーはジョー・エリオット(vocal)、フィル・コリン(guitar)、ヴィヴィアン・キャンベル(guitar)、リック・サヴェージ(bass)、リック・アレン(drums)の5人体制です。
それではアルバムのレビューに移ります。
曲目は以下の通りの全12曲となっております。
1.『ウィメン(Women)』
2.『ロケット(Rocket)』
3.『アニマル(Animal)』
4.『ラヴ・バイツ(Love Bites)』
5.『シュガー・オン・ミー(Pour Some Sugar on Me)』
6.『アーマゲドン(Armageddon It)』
7.『ゴッズ・オブ・ウォー(Gods of War)』
8.『ショットガン(Don’t Shoot Shotgun)』
9.『ラン・ライオット(Run Riot)』
10.『ヒステリア(Hysteria)』
11.『エクサイタブル(Excitable)』
12.『ラヴ・アンド・アフェクション(Love and Affection)』
アルバム中7曲もシングルカットされ、いずれも全米チャート入りしてます。
まず冒頭1曲目『ウィメン(Women)』の重厚なバラードで本作は幕を明けます。この曲を1曲目に持ってくるところが、今作のラインナップの強固さを象徴していると言えます。
2曲目の『ロケット(Rocket)』は、軽快な音調でサビの部分のコーラスが印象的なナンバーです。
そして3曲目の『アニマル(Animal)』は、「デフ・レパード」の存在を知ったきっかけでもあり、とても思い入れ深い楽曲です。
キャッチーなメロディとギターのアルペジオが印象的で、自身この曲を何度も練習しました。
4曲目の『ラヴ・バイツ(Love Bites)』はおそらく聴いたことがある人も多いと思われる、全米チャートで初めて1位を獲得した彼らの代表的なバラードナンバーです。
続いて5曲目の『シュガー・オン・ミー(Pour Some Sugar on Me)』
こちらも彼らを代表する曲で、全米チャートで2位を獲得しています。
骨太なリフと腹の底からシャウトするようなボーカルのハードなナンバーは、スタジアムで観客と一体となって盛り上がること間違い無しの1曲です。
6曲目の『アーマゲドン(Armageddon It)』もシングル・カットされ、全米チャート3位を獲得したメロディアスでポップなロックナンバーです。
と、ここまで強力なナンバーが続きましたが、これ以降の曲も決してつなぎの曲ではなく、どれもシングルカットされていてもおかしくないクオリティの曲ばかりです。
そして、10曲目の『ヒステリア(Hysteria)』
これまでとのナンバーと違い、爽やかなギターアンサンブルで始まるアルバムタイトル曲です。サビに向かっての盛り上がり方はもちろん、曲が終わった後の余韻が素晴らしいです。
ハードなナンバーのみならず、こういった音色も得意とするのがデフ・レパードの強みであり、魅力的な部分ですね。
そしてアルバムは再び重厚なバラード『ラヴ・アンド・アフェクション(Love and Affection)』を持って幕を閉じます。
聴き終わった感想は、一本の超大作映画を観終えたかのような満足感と達成感でいっぱいになりました。
本作はベストアルバムと遜色ない楽曲の豪華と豊富さを兼ね備えています。
ちなみに、アーティストにとってヒット曲を生み出すことは死活問題であり、自分たちのやりたい音楽と売れる楽曲を生み出すことのジレンマは、永遠のテーマであると言えます。
デフ・レパードのような、いわゆる商業主義と揶揄される産業ロック・スタジアムロックと言われるサウンドは当時一部の人たちから批判を浴びました。
ただの売れ筋だけの中身のない楽曲を作るというのは、個人的にもあまり良い印象を持ちません。
しかし、最初から”商業主義”と自分にフィルターをかけて作品を聴かないのは、自身の音楽の幅を狭めてしまい、もったいないと思います。
2017年時点で2,500万枚以上を売り上げた記録を残した本作は、間違いなく80年代を代表する歴史的名盤であり、様々な苦難を乗り越え、やっとの思いで発表されたその圧巻の楽曲クオリティは、これからも色褪せること無く聴き継がれていくことでしょう。
これからも偏見という名のフィルターを持たずに、あらゆる音楽に貪欲に出会って行きたいです。